
友人の家にて

“いま足に何かの感触がした”

(すねに猫が擦り寄る)

“これがすねこすりか!”
「すねこすり」という妖怪がいる。
すねこすりとは、岡山県に伝わる妖怪で、雨の夜に犬のようなものが足にまとわりつき、上手く歩けないといった現象だ。
しかし現在「すねこすり」というと、結構みんな猫のようなビジュアルが頭に思い浮かぶのではないだろうか?
これは多分に「ゲゲゲの鬼太郎」でおなじみの水木しげる先生が描いた「すねこすり」の影響だと思う。
この絵はおそらく単語の中に「す猫すり」と猫を感じてしまったためと僕は推測するのだ。
実際のところは「脛こすり」だろうか?
しかし水木しげる先生が「すねこすり」を正しく理解していなかったわけでは当然なく、手元の「水木しげるの妖怪文庫(1)」には、岡山の犬のような「すねこすり」に始まり、群馬のイタチのような「オボ」、奄美の豚のような「ミンキラウワ」「カタキラウワ」、鹿児島の「ムィティチゴロ」と、各地の似たような現象が列記されている。すごい。
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実際のところ、街灯もないような昔の夜道(しかも雨)で、何かがすねにすりすりしてきたとしても、その何かが何なのかは正確に分からなかったのかもしれない。
夜道なら怖いが、明るいところで見る「すねこすり」はとても可愛いというところだろうか。