今回は Nintendo 3DS 専用ソフト「新 絵心教室」のレビュー。
「新 絵心教室」とは、絵を描くためのコツを教えてくれるソフトである。
多くのレッスンを通じて、絵を描く基本と、画材の扱い方を学ぶことができる。
鉛筆、絵具、色鉛筆、パステル、と複数の画材を使えるのも特徴だ。
さて、僕は「新 絵心教室」を発売直後に購入したものの、しばらくは、あまり手を付けずにいた。
なぜかというと、僕は普段からPCにペンタブレットで絵を描くというスタイルなので、「新 絵心教室」の仕様が不便に感じてしまっていたのだ。
具体的に言うと、PCソフトでは当り前の、取り消しの操作(アンドゥ)がないこと。そして、セーブ時間が長いこと。
僕は当初、取り消しの操作がないために、セーブ→再起動を、取り消しの代わりとして使っていた。
ところが、セーブ時間が長いために、これが非常にストレスになる。
「新 絵心教室」で自分の気に入る線が引けなかった場合、取り消しは効かず、鉛筆を使っていれば、消しゴムでその線を消すことが必要になる。
しかし、これを不便に感じるのはデジタルによる作業に慣れているからで、アナログでデッサンをする時は、消しゴムで線を消すのは当り前のこと。
デバイスがデジタルなので、頭がデジタルゆえの便利さを求めてしまっていたのだが、「新 絵心教室」は、あくまでアナログ画材をシミュレートしたものと、頭をアナログモードに切り替えると、特に不便さを感じることもなくなった。
それに気付いてからは「新 絵心教室」を中断するか、レッスンが終了するまではセーブしないことにした。
そうすると「新 絵心教室」の本当の良さが分かってきたというわけ。
僕は、専門学校にまで行って、絵というものを学んでいたのが、絵の教育というのは、ある問題を抱えていると思う。
それは「絵というものは教えるものではないという誤解」である。
これは絵に限らず、師匠が弟子に、目で見て技を盗め、といった風潮がまかり通るジャンル全般に共通する問題だと思う。
例えば、自動車の運転を考えると、もし、あなたが自動車を運転する技能を身に付けたい場合、普通は自動車学校に行く。
そこで、運転の技能と、必要な知識を学び、試験にパスすれば、あなたは公道で自動車を運転することが出来る。
自動車の運転にも上手下手はあるが、重要なのは、運転免許を取得したことで、とりあえず運転というものは出来るということ。
これを絵で考えた場合、まず基本的な運転免許に相当する部分ですら、普通はほとんど教えてもらうことはないということ。
実は、絵の上手下手ということ以前に、絵の描き方の基本というものをきちんと教わることがないのが現実だ。
鉛筆デッサンの場合、どの濃さの芯の鉛筆を選べば良いのか、どのように形をとらえて、どういった順序で描けばいいのか。
絵を描くにあたっての、こういった基本的な部分を「新 絵心教室」は教えてくれるのだ。
まずこの線を引いて、次にこっちの線を引いて、ガイドに使ったこの線は要らなくなったので消します、といった具合に、ステップ毎に丁寧に教えてくれる。
しかも、デッサンのアプローチも複数の方法を教えてくれるといった本格仕様。
絵の教育というのは、この基本的な部分がおろそかになっていることが多い。
というより、車の免許のように明確な判断基準がないために、絵の教え方という部分がきちんと確立されてない。
自動車学校の先生であれば、誰が教えてもほとんどの生徒が免許を取るレベルにはなる。
しかし、小学校の先生に、誰が教えてもほとんどの児童が絵の描き方の基本をマスター出来るレベルに持っていけるスキルがあるかというと、これは疑わしい。
そのため、絵の上達には先生の当たり外れなど環境が影響してしまう。
だから、このようなソフトで学ぶことによって、基本が身に付けば、実は絵が上手だったというのは十分にあり得る話だと思う。
「新 絵心教室」には、デッサンの上達に有用であるデスケル(デッサンスケール)に相当する、ガイドというグリッドも用意されているし、実に良く考えられている。
欲を言えば、レッスン開始時に、先生の完成画像を、先に見れると良いと思う。
そうでないと、現在の作業が、完成に向かってどう関わっているのか分からないことがあるからだ。
まぁ、まずは先生の言った通りに素直に作業して、完成後に自分の気の済むまで手を加える(もしくは描き直す)というスタイルが最も早く上達するのではないだろうか。
僕は、ある程度は絵が描けるほうだと思うが、それでもこのソフトを買って良かったと思っている。
絵を描くことに興味がある方には、まず基本を身に付けられるということ、そして他の方法で学ぶよりも圧倒的にコストパフォーマンスが高いということで、オススメ。

“パソコンでイラストを描く”
“よし休憩”

“3DSで「新 絵心教室」”

“うん?”

“休憩なのに絵を描いてる”